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[プログラムの概観]
オリエンテーション期間は家族との連絡も禁じられ、 箱根の学校施設で奇妙なマス・ゲームを何度もやらせる。 例えば、グループのメンバーは遭難した船に乗りあわせた乗員である、 という設定が与えられる。
最後の日、新入生は目隠しをされ、別室に呼ばれる。
そして、目隠しをとるように指示される。
すると思いがけないことに目の前には自分担当のアシスタント・チューターが花束を持って立っている。
そして「おめでとう」とにっこり笑って、花束を差し出す。
自己啓発セミナーには基本的に第一段階 Basic 、第二段階 Advance 、 3 段階目の 3 つのコースが用意されている。 ただし、最近はそのように呼ばないセミナーも多い。 なお、この構成は、一時期の米国ライフスプリング社のプログラムを踏襲したものである。
第一段階は、だいたい 3 〜 5 日の通いで、費用は数万から十数万。 第二段階は、だいたい 3 〜 4 日の宿泊で、費用は十数万から二十数万。 第三段階は、だいたい 2 〜 6 ヶ月間で、 大きなセッションは最初、中間、最後に用意され、 その他に小さなセッションや、グループ・ミーティングがある。 費用は無料から数万である。 また、第一段階の前には、 セミナーに新規の受講生を勧誘するためのゲスト・イベントが用意されていたり、 各段階の間にはフォローアップのセッションや、 個別のインタビューなども用意されている。 フォローアップやインタビュー・セッションでも、 上のコースを受講するように盛んにすすめられることになる。
セミナーでは、トレーナーと呼ばれる司会者がプログラムをリードする。 プログラムには、脚本のようなマニュアルが存在している場合もあり、 トレーナーはこれに習熟している。 また、セミナーの卒業生が、ボランティアのアシスタントとして参加している。 参加者は、セミナー中にグループを形成し、グループ間で競争したり するように求められる。 このグループを各アシスタントが 1 名ないしは 2、3 名で受け持ち、 グループでのセッションの進行をサポートする。
おおよそ、各セッションは、実習、レクチャー、シェアーが 1 セットになっている。 シェアー(share)とは、自分の体験や意見を参加者が話すことである。 そして、シェアーの後では、全員で拍手をするように求められる。 順番は、「実習 → レクチャー」ないしは、「レクチャー → 実習」となっていて、 レクチャーが実習の振り返りになっている場合と、 レクチャーの内容を実習で確認する場合とがある。 シェアーは、通常これらの後である。
以下では、各コースの概要を紹介する。
Basic ではセミナーで提唱する考え方やものの見方を、「実習」を通して学ぶ。
福本博文著、『心をあやつる男たち』によれば、 業界最大手だったライフダイナミックスでは、 セッションは厚さ 10cm のマニュアル 2 冊に則って進行されていたようである。 他のセミナーもライフダイナミックス出身の人が始めたものも多いようで、 似たような構成になっているようである。
Basic では、これまでの自分が糾弾されるようなプロセスと、 それでも「そのままのあなたで十分素晴らしいんですよ」などと、 どん底から拾い上げるようなプロセスが交互に、 しかも段々振幅が大きくなるように構成されている。
そして、それと同時に「過去の経験で習得した思い込みや偏見などが、 その人の可能性を押し込めている」とか、 「とにかくまずやってみることが重要だ」とか、 「わたしもあなたも互いに相手に Yes を言おう」 などというメッセージが提示される。
Advance では、 Basic で学んだ新しい考え方、ものの見方を使って、 実際に色々なことを実行してみることで (普段では絶対にできないとか、しないようなことをする場合もある)、 あたかも「古い自分」が死んで、 「新しい自分」が生まれるとでも言ったようなプロセスが、 起こるようにプログラムされてらしい。
乗っていた飛行機が故障で海に不時着し、どんどん沈んでいるが、 救命ボートには n 人しか乗れず、乗客全員で誰を乗せるか投票するという 「ライフ・ボート」の実習や、 母の胎内から再誕生するようなバース・サイコロジーっぽい実習が 行われることもあるようである。
そして 3 段階目は、知人などに Basic を受講させること (エンロール: enroll) が実習の目的になっていることが多いようだ。
Basic や Advance で学んだことを実際の生活の中で実現していくコース であるなどと言われて集まった参加者に、 「あなたの素晴らしい体験を、できるだけ多くの人とシェア して(share: 分かち合って)ください」などと言うわけである。 言い方はともかく、これは結局は「セミナーに参加させろ」ということである。
そして、場合によっては、このときに何人エンロール できるかを宣言したりすることもあるらしい。
ここまでのセミナーで、「思い込みや偏見はだめ」とか、 「とにかくやってみることが重要だ」とか、 「相手に Yes を言うべきだ」とかいうものの考え方が提示されているので、 仮に何を依頼されたとしても、 断ることは大変難しい状況に追い込まれている。
このエンロールも「勧誘」と見なすのは 「過去の経験からくる思い込みや偏見」であるというわけである。
また、「やるといったことを、とにかくやる人間」や 「ぐずぐずしないで全力投球する人間」が素晴らしいという価値観が 提示されているので、 これまでのセミナーでやってきたことと矛盾するような行為を冒さない限り、 一生懸命エンロールと呼ばれる勧誘活動を行うことになる。
それから、セミナーでは、その中で示した考え方などを 十分日常の中で確認する時間を与えたくないかのように、 次々と間を空けずに次のコースを受講するように薦められるのである、 その方が「効果がある」などと言って。
しかし、セミナー会社ではこういった事実を「受講生が自主的に やっているだけである」などと表現するだけのこともある。
もっとも、バブルがはじけてセミナーに大量のお金を注ぎ込む人が 減ってしまったのか、それともセミナー乱立時代を経て、 既に受講者の潜在的需要数が飽和したのか、 セミナー会社では経営が困難になり、 新たなプログラムを開発するなど方向性を模索しているとも聞かれる。
業界最大手のライフダイナミックスも近年、 大幅なトレーナー(要するにセミナーの司会者であり進行係) の首切りを行ったとも風の便りに聞きかれた。 また、 1999 年に入ってから、ライフダイナミックスは、とうとう日本人向けの コースを中止した。
そういった中で、セミナーによっては、 3 段階目のコースをエンロールと呼ばれる勧誘活動でなく、 別な内容にしているところもあるようである。
つまり、これまでのセミナーでは、 受講者を「 100 % 参加」させるためにか、 各コースは 1 回ずつしか受けられないと定められている場合があったり、 そもそも全力で勧誘するような 3 段階目などは、 そう何度も受講することが現実的に不可能だったという事情があった。
要するに、次から次へと新しい受講者がセミナーを通り過ぎていくという 形式だったというわけである。
しかし、受講者の潜在的需要数が既に飽和してしまったとすると、 これ以上このようなプログラムを続けていても、 新規の受講者にあまり期待ができないわけで、 経営は成り立たなくなる。
そこで、一度受講してしまった人でも、 何回も受講できるような内容のプログラムを作って、 しのいでいくことになったというわけではないかと思われる。
というわけで、最近はエンロールなしのセミナーも あるらしい。
とは言え、最近でも勧誘を受けたという話がよく聞かれる。 現在でも新規のセミナー会社がいくつか設立され、 エンロール活動を展開しているようですので注意が必要である。
特に、会社の研修としてセミナーが取りれられていたりして、 非常に断りにくいこともあるようで、なかなか難しい問題になっている。
[プログラムの概観]