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■自己啓発セミナーの都市伝説■


ベトナム帰還兵のリハビリ起源説

自己啓発セミナーの周辺では、「自己啓発セミナーは、 ベトナム帰還兵のリハビリテーションに起源を発している」 という都市伝説があります。

実際には、自己啓発セミナーの起源は、 アレクサンダー・エヴェレットのマインド・ダイナミックスと ウィリアム・ペン・パトリックのリーダーシップ・ダイナミックス・インスティチュート(LDI)です。 これらは最初アメリカで行われていたものです。 前者は、人間の心に関係した潜在能力を、イメージ誘導や催眠などを使って、 α波を誘導することで開発し、ありとあらゆる願望を達成するという講座でした。 なお、ライセンスなしに医療行為を働いたという件で検挙されています。 後者は、マルチ商法のホリディ・マジックの上級ディストリビューターになるための研修で、 参加者を一人ずつ糾弾したり、精神的かつ肉体的(時には性的)な虐待を加えるという内容でした。 このような激しい苦行を経て、はじめて本当の偉大な人間になれるのだとでも言わんばかりの。 その虐待的な内容のために、やはりこれも検挙されています。 この 2 つに車や本の訪問販売のテクニックを追加したのが、 ワーナー・エアハードであるとも言われています。 また、エンカウンター・グループ(LDI の内容は、ある意味、 極論すればエンカウンター・グループ「的」とも言えないこともない。 また、セミナー中に行なわれる自分で思っていることを素直に表現してみるなどの実習は、 エンカウンターっぽいところがある。) やゲシュタルト療法(エアハードはゲシュタルト療法を受けたことがあるらしい。 また、ライフスプリング社のプログラムには、 ゲシュタルト・インスティチュートのジョン・B・エンライトが協力したらしい。 ゲシュタルト療法は、実存主義哲学がコアにあり、 セミナーで「今、ここ」を強調するところなどには、その影響が見られる。) などのヒューマン・ポテンシャル・ムーヴメントの心理療法の影響や、 ポジティヴ・シンキングや、サイエントロジーなどのテクニックも混入しているというのが定説です。

ところが日本では様相が少し変わってきます。 まず、ベトナム帰還兵の話が前面に押し出されます。 この話のルーツは、エンカウンターで有名なカール・ロジャーズが、 「第二次大戦」からの帰還兵のリハビリのセッション「も」やっていたことではないかと、 わたしは想像しています。 これは仮説ですが、ロジャーズの話を知っていた人が言いはじめた話が、 まことしやかに広まっていったのではないかと。 ちなみに、ロジャーズは帰還兵の問題の他に、 アイルランドの紛争などのチャレンジングな問題にも、 自分の心理療法の方法論でぶつかっていったことは有名です(成果はともかく)。 また、自己啓発セミナーのルーツとして、 交流分析(、サイコ・ドラマ、神経言語プログラミング、論理療法、 人によってはアドラー派の心理療法)などの影響を挙げる人もいます。 二澤雅喜、島田裕巳著『洗脳体験』に紹介されたトレーナーのコメントが、 この話を広めるのに一役買ったことは間違いないでしょう。 自己啓発セミナーによっては、これらの手法のうち(少なくとも表層的には) マニュアル化しやすい交流分析や神経言語プログラミングなどのセミナーを開いたり、 既存のセミナーの中に取り入れているものもあります。 たしかに、これらの心理療法は互いに幾分か似ているところがあります (同じ人の心にはたらきかける方法なので、似ている方がむしろ自然でしょう)。 しかし、これらの影響があると敢えて主張しているのは、 ひょっとして日本の特徴ではないかと思います。 また、これはわたしの仮説ですが、 アーク・インターナショナル設立の立役者である島津幸一が、 APO ジャパン時代に、エイブラハム・マズローの業績や、交流分析の理論などを研究し、 トレーニング・マニュアルにまとめたことが知られていますが、 この影響が現在の日本のセミナーにはひょっとするとあるのかもしれません。


ジョン・レノンのイマジン

ジョン・レノンが自己啓発セミナーを受講して「イマジン」を作ったという都市伝説が セミナー周辺では流布しています。

ジョン・レノンが、アーサー・ヤノフのプライマル療法という心理療法を受けた話は有名ですが、 これはセミナーではありません。 プライマル療法では、叫びとともに心の傷を吐き出していくという手法を 何回ものセッションにわけて比較的長期わたって行ないます。 この療法の有効性は疑問視されているのですが、 ジョン・レノンは少なくとも自分には役に立ったとコメントしています。 この療法の影響については、アルバム『ジョンの魂(プラスチック・オノ・バンド)』に見られます。 また、アルバム『イマジン』の発売時期は、 現在の形の自己啓発セミナーがスタートした時期とほとんど同時期であり、 そういう意味で、「イマジン」がセミナーにインスパイアされたという説には、 かなり無理があります。


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