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ワーナー・エアハード(Werner Erhard)と est

「人生において、理解なんてものはブービー賞さ。」 -- ワーナー・エアハード

ワーナー・エアハードの est[エアハード・セミナーズ・トレーニング、 そしてラテン語の「it is」] は、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントにおいて、 大いに成功をおさめたものの一つである (訳注: 原文では "Erhard Seminar Training" となっているが、 通常 "Erhard Seminars Training" と呼ばれるので、 そのように訳した。 また、 est の語源は、ほとんど名前も知られていない SF 作家の書いた 超人類ものの SF のタイトルであるという説もある)。 est は心理学者が大規模自己啓発セミナー (Large Group Awareness Training program)と呼んでいるものの一例だ。

「はじめての est のセミナーは、 1971 年 10 月にサンフランシスコのジャック・タール・ホテルで、 1000 人近くの参加者を集めて開催された」。 1991 年に、エアハードが仕事を辞めて国外に去り、セミナーが閉鎖されるまでに、 約 70 万人の人々がトレーニングを受けたと推測される [Faltermayer]。 彼は est の「テクノロジー」を、ランドマーク・フォーラム (Landmark Forum)を設立した何人かの部下に売り渡している。 エアハードの兄弟のハリー・ローゼンバーグ(Harry Rosenberg)が、 ランドマーク・エデュケーション株式会社(Landmark Education Corp. 略して LEC)を率いており、 この会社は年間 5000万ドルを稼ぎ出し、約 30 万人の参加者を集めた。 LEC は、 est 同様、サンフランシスコに本部を置き、 11 ヶ国に 42 の 支部を持っている。 しかし、少なくとも表向き、エアハードは LEC の運営には関与していない。

エアハードと est は、 Get 「It」により、 トレーニングの参加者からよく知られているが、これは作家であり、教師、そして卓越した語り手でもあった アラン・ワッツ(Alan Watts)から拝借してきた概念である。 ベイ・エリアにエアハードがやってきた頃、ワッツは自分の禅についてのビジョンを、 サウサリトの自分のハウスボートの上で、小さなグループを相手にして教えていた。 エアハードも、ワッツ同様、人々に「Get It」を教えた。 しかし、主にワッツは本を通じて自分の教えを説いていた。 彼のセミナーは小さなものだった。 一方、エアハードの方は本を通じて教えようとはせず、 大きなホテルの舞踏場で同時に何百人にも向かって教えることにしたのだ。

est は部分的に禅のマスターのアプローチを取り入れていたが、それらはだいたいにおいて虐待的で、 冒涜的で、品性がなく、権威主義的なものだった (わたしの好きな禅の話の一つに、弟子と問答を行なうマスターの物語がある。 弟子が何を答えようと、マスターは棒で彼を叩いた。反対の答えを言っても、棒で叩かれた)。 虐待的なアプローチの典型的なものとしては、 est のトレーニングでは、 実に奇妙な尿意のコントロールを要求されることが挙げられるだろう。 参加者は、トレーニングの最中、たとえトイレに行くためであっても、 部屋を出ることは許されなかったのだ (est トレーニングのこの側面は、バート・レイノルズ(Burt Reynolds) とクリス・クリストファーソン(Kris Kristoferson)演じる映画 「タッチダウン(Semi-Tough)」(1978) の中で物笑いのたねにされている)。 (訳注: est は No-Piss トレーニングとして有名である。 est のようなニューエイジ系の思想にかぶれた自己啓発セミナーでは、 「自分が源泉(Source: 要するに、自分のまわりに起こってくることは、 全部自分の責任であると)」であり、極端な場合、 信念ばかりか現実まで自分次第でどうにでもなると主張することがある。 これは、その一例で、尿意を創り出しているのは自分なので、 それも自分でコントロールできるはずだという話である。 このようなヘンテコなルールを参加者に守らせることで、 セミナーの雰囲気はどんどん非日常化していく。 また、最初はこんなルールを守るのは到底無理だと思っていても、 今までやったことがないだけで、実際にはできてしまったりすることがある。 単にそれだけのことなのだが、実際の体験としてできてしまったということで、 参加者もだんだん「自分が源泉」という話にリアリティを感じるようになっていく。 似たようなものとして、病気を創り出しているのも自分なので、 セミナー中に治療薬を飲むことを禁止するというルールを課すセミナーもあった。 この結果、実際に死人がでてしまい、裁判沙汰になったものもある。)

エアハードとサイエントロジー

1960 年代の終わりに、エアハードはサイエントロジー(Scientology)を学び、 L・ロン・ハバード(L. Ron. Hubbard)から大きな影響を受けた。 エアハードがハバードからその主要な概念を est に盗んだとして、 サイエントロジーの人々は今日まで彼を非難してきた。 ハバードがダイアネティックス(dianetics)とサイエントロジー教会でやったように、 エアハードも est を立ち上げるときに教会として作ることも検討していたことはよく知られている。 しかし、エアハードは広大なマーケットの中で利益を上げるために、教育会社として組織することを決めたのである。

エアハードとその支持者たちは、 IRS(Internal Revenue Service: 内国歳入庁)による追求や、 彼の子供たちからの近親相姦についての告発も含め、 エアハードの信用を失墜させようとする様々な試みの影に、サイエントロジーの存在があったとして非難している。 エアハードは IRS に対する訴訟に勝ったし、 近親相姦の告発についてはたぶんセラピーによって誘発された 偽りの記憶によるものだったのだろう。 エアハードは、また、サイエントロジーの人々が彼を抹殺するために殺し屋を雇ったとすら主張しているが、 彼が生きのびていることの最も論理的な説明は、たぶん本気で殺そうとした奴は誰もいなかったということだろう。

est はダイアネティックスではない

しかしながら、 est はダイアネティックスにもサイエントロジーにもあまり似ていない。 est は以下に列挙したようなものの屍体から、つまみ取ってきた哲学的な断片のごちゃまぜといった代物である。 それらは、実存主義哲学、動機付けに関する心理学、マクスウェル・マルツ(Maxwell Maltz) のサイコ・サイバネティクス(Psycho-cybernetics)、禅仏教、アラン・ワッツ、フロイト、アブラハム・マズロー (Abraham Maslow)、L・ロン・ハバード、ヒンドゥー教、デール・カーネギー(Dale Carnegie)、 ノーマン・ヴィンセント・ピール(Norman Vincent Peale)、P・T・バーナム(P. T. Barnum)、 そして急速に拡大しつつあったヒューマン・ポテンシャルのマーケットの中で うまくいきそうだとエアハードの直観が告げたものならなんでもだ。 エアハードが、自分のプログラムに、 数百とか数千ドルもの金をつぎ込んだ連中に約束したことは何だったのだろう? 彼は、その連中の「心を噴き飛ばし」て、意識を新しいレベルへと上昇させることを約束した。 簡単に言ってしまえば、彼はその連中をスペシャルにするということだった。 彼は次のように言うだろう。 まず、君たちは意識の「配線をやり直す」必要があるという問題を抱えている。 そしてわたしのプログラムを受ければ、それができるのだ。 ひとたび意識がまっすぐになれば、 人生はよくなるか、少なくとも違いが起こるだろう。 自律してうまくコントロールできるようになるので、 パワフルになり、自信が出て、成功することができるだろう。 ラジカルなこれまでと違ったものの見方を学ぶこともできるだろう。 何も変わったわけではないが、すべてが変わるだろう (ワッツも禅の弟子に対して同様の約束をしていた)。 目の前に立ちふさがるようなものは何もない。 また、悪いプログラムや配線によって、 これまでの人生においてずっと与えられてこなかったすべての機会を、 奪ったりするものももうない。 est を通じて、自由になり、もう一度生まれ変わることができるのだ! すべての問題や限界は心の中にある。 さあ心の配線をやり直せ、つまり、パーソナリティをぶちこわし、 ネガティヴなものを全部追い払って、他人を非難することをやめ、 受け入れることを学ぶのだと。

エアハードのセルフ・トレーニング

エアハードはどこでトレーニングを受けたのだろう? ほとんど、彼は独学だった。 彼の勉強には、方向性があったわけではなく、いきあたりばったりだった。 1960 年の時、彼はジョン・ローゼンバーグ(John Rosenberg) であり、 25 歳で、結婚していて子供もいた(訳注: 詳しくは、John Paul Rosenberg)。 明らかに人生には満足していなかったが、受講できる大規模自己啓発セミナーはなく、 多くの不幸な男がよくやるように自分の家族を捨ててしまった。 そしてフィラデルフィアを去って、セント・ルイスに行き、名前を変えて車を売っていた。 キリスト教徒になったユダヤ人(彼の両親は、彼に監督派教会で洗礼を施した)が、 自分自身にドイツ人の名前をつけることで自己同一化を図ろうとしたことには、 興味を感じる人もいるだろう (訳注: ワーナー・ハンス・エアハード(Werner Hans Erhard) という名前は、 物理学者のウェルナー・ハイゼンベルグ(Werner Heisenberg) と ハンス・リルイェ(Hanns Lilje)主教と ドイツの経済相や首相になったルートウィッヒ・エアハルト(Ludwig Erhard) から来ている)。 しかし、彼の変容(transformation)に関してもっとおもしろいのは、彼が読んで影響を受けたという本だ。 ウィリアム・ウォレン・バートレイ III 世(William Warren Bartley III)は、 (『ワーナー・エアハード -- ある一人の人間のトランスフォーメーション (Werner Erhard -- the Transformation of a Man: 邦訳なし)』の中で) エアハードは「競争にあけくれる、無意味な現状というものに大いに不満をいだいて」いて、 ナポレオン・ヒル(Napolen Hill)の『思考は現実化する(Think and Grow Rich: 邦訳は、田中孝顕で、きこ書房から)』に深く感銘を受けたのだと語っている。

ヒルの 3 つの基本的な原則は次のようなものだ。 まず、すべての達成は考えから始まる。 また、計画を立てることはその実現を呼び込む。 そして、思考は行動だ。ポジティヴに考えろ、そうすればポジティヴに実行できる。

またヒルは、目的を視覚化することと、 似たような考えを持っている友人を選ぶことをすすめている。 ヒルはとてもよいアドバイスをしているが、これらは非常に曖昧だし、 システマティックなものではない。 これらは、自分の目的や自分が何をすべきかということが わからない連中には、ほとんど何も与えてはくれない。 彼の考えのいくつかは適切に用いられなかった場合、有害なものにもなり得る。 たとえば、仮にそれがウソをつくことであっても、 常にポジティヴに話すべきだと教えられた人たちがいたとしよう。 あなたは 2 年間何も売ることができなくても、 ものごとのポジティヴな面を見て、 みんなに仕事ががうまくいくようになるといいなあと言わなければならない。 自分が売っているものについて何も知らなくても、 信じている以上にそれを誉めなければならない。 何かある失敗を経験しても、自分自身にウソをついて、 偉大なことをやったんだと自分自身に言わなければならない。 売れないからといって、決して商品のせいにしてはならない。 もっと一生懸命挑戦し、もっと忠誠心を持ち、 もっとポジティヴにならなければならない。 たぶん、あなたが成功するには、 上級のセミナーを受ける必要があるのかもしれない。 さて、気づいてみれば、あなたは破産し、 援助して(「スポンサー」になって)くれるような人は、 どこにもいなくなっているってわけだ。

エアハードに他に重要な影響を及ぼしたものの一つは、 マクスウェル・マルツの『サイコ・サイバネティクス(邦訳は、小圷弘で、 題は『自分を動かす』、知道出版から)』である。 若い頃、エアハードは明らかにたくさんのネガティヴなセルフ・イメージを持っていて、 自己催眠を特に強調していたマルツに深く影響された。 エアハードは、取引先の学校をまわるセールスマンとして働くことが、 自分の新しい概念や新しい自己であると考えた。 催眠への興味はマルツによって喚起されたものだったが、 エアハードの興味の焦点は「プログラミング」と 「再プログラミング」にあった。 マルツの用語は無闇にややこしいものだったが、 その概念は役に立たないものでもなかった。 彼が傾倒した基本的な概念とは、よくない習慣というものは、 われわれにプログラムされているものであるというものだった。 つまり、通常の意識状態にあるときにも、 われわれは「催眠をかけられて」おり、 それが問題を発生させているというのだ。 つまり、われわれは、 無意識に自分自身を衰弱させてしまうような習慣や信念を生み出しているということだ。 これらを取り除き、 ポジティヴで人生をよりよいものにする信念や習慣に置き換えるというのが、 この話のポイントである。 しかし、これもまた用語は非常に曖昧であり、 これらについて科学的な評価を下すことはたぶん何もできないだろう。

サンフランシスコにやってきたとき、エアハードは、 グレート・ブックス(Great Books)やペアレント(Parent) の雑誌を販売したり、そのセールスをする人たちを管理する仕事をしていた。 ロバート・ハードグローヴ(Robert Hardgrove)を雇ってから、 彼はセルフ・ヘルプ運動の一端を担うことになった。 ハードグローブは、エアハードに アブラハム・マズローカール・ロジャーズ(Carl Rogers)の業績を紹介した。 精神障害者や不健康な人たちではなく、健康で、幸せで、充足し、 達成している人たちに重きをおいていたということで、 マズローとロジャーズは当時の心理学ではユニークな存在だった。 ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントはちょうどはじまったところで、 エアハードはそれに最初から参加することができた。

関連する項目 火渡り(firewalking)ランドマーク・フォーラム(Landmark Forum)大規模自己啓発セミナー(Large Group Awareness Training programs)神経言語プログラミング(neurolinguistic programming)


参考文献

読者のコメント

Ankerberg, S John and John Weldon. Encyclopedia of New Age Beliefs (Harvest House Publishers, Inc., 1996).

Barry, Dave. "Altered States" in The Miami Herald, April 13, 1997. (Humorist Dave Barry takes Peter Lowe's SUCCESS 1997 12-hour success seminar featuring Anthony Robbins, Elizabeth Dole, Rabbi Harold Kushner, Brian Tracy, Lou Holtz, Jim Morris, Peter Lowe, Pat Riley, Dr. Ted Broer, George Bush, and Dan Kennedy.)

Pressman, Steven. Outrageous Betrayal: The Dark Journey of Werner Erhard From est to Exile, (New York: St. Martin's Press, 1993).


訳者コメント

現在、自己啓発セミナーと日本で呼ばれているものは、大別して 2 つあり、 一つがライフスプリング(Lifespring)系で、もう一つがこの est 系である。 ほとんどのセミナーは、ライフスプリングの流れを汲むライフダイナミックスから分岐している。 ライフスプリング系は、セミナー中にいろいろと実習と呼ばれるゲームがあり、 感情を大きくゆさぶられる。 est 系は、ライフスプリング系に比べると、椅子に座ったまま、 トレーナーとやりとりする時間が長い。

さて、エアハードの話は、ここに書かれたものの後のことも、 実におもしろいと思うので紹介しよう。 元 est とハンガー・プロジェクトのメンバーだった Carol Giambalvo による "The Hunger Project Inside Out"や、 参考文献に挙げられている Steven Pressman の "Outrageous Betrayal" などによれば、次のようになる。

まず、エアハードは、ナポレオン・ヒルや、マクスウェル・マルツに かぶれて、その後サイエントロジーに一時いたという話はここまでの通りだ。 そして最後に、アレクサンダー・エヴェレット(Alexander Everett)が やっていたマインド・ダイナミックス(Mind Dynamics)というセミナーを 受講してのめり込み、トレーナーになった。

エヴェレットは、イギリス人の教育関係者だったのだが、 オカルトやニューエイジにかぶれまくっていた。 そして、ホセ・シルバ(Jose Silva)のシルバ・マインド・コントロール (Silva Mind Control)という、イメージ誘導や催眠でα波を誘導し、 潜在能力が開発できるというセミナーを受けた。 このセミナーを真似て、それにいろいろなものを詰め込んで、 1968 年にはじめたのがマインド・ダイナミックスである。 このセミナーに参加すれば、潜在能力が開発できて、 ガンでも治るとか言っていたらしい。 そして、化粧品マルチのホリディ・マジック(Holiday Magic)をやっていた ウィリアム・ペン・パトリック(William Penn Patrick)が、 マインド・ダイナミックスに目をつけ、 ディストリビューターの訓練にこれを採用した。 このとき既に、パトリックは、自分でリーダシップ・ダイナミックス・インスティチュート (Leadership Dynamics Institute)というトレーニング組織をやっていた。 ここで行われていたのは、参加者を一人ずつ全員の前で、肉体的、精神的、 時には性的に虐待を加えるというセミナーだった。 この 2 つが、現在の自己啓発セミナーのベースになっている。 なお、マインド・ダイナミックスは数年間しか存在していなかったが、 エヴェレット自身はマインド・ダイナミックスをやめた後も、 いろいろアヤシイものにはまったり、インワード・バウンド(Inward Bound) という、瞑想を中心にしたセミナーをはじめたりした。 彼は 1991 年に来日してセミナーを行なっているが、 このとき既にサイババに傾倒しおり、その話をセミナー中にしていたようだ。 ライフスペースの高橋弘二への影響も気になるところである。

ところで、マインド・ダイナミックスの給料は、完全に歩合制で、 参加者の人数によって支払われていた。 とは言え、この頃はまだトレーナーたちも、 マインド・ダイナミックスで働くことが、 自分自身の成長のためにも役に立つと思っていたようで、 一回のセミナーの参加者は 2〜30 人くらいだったが、 それで満足していた。

ところが、エアハードは、自分の受講生に各 5 人ずつ新人を連れてくるように 言いだしたのだ。 また、ゲストセミナーという、無料のイベントもはじめ、 受講生に勧誘した人を連れてこさせた。 演出たっぷりに盛り上げたゲストセミナーでは、 最初にエアハードがセールスマン時代の特技を活かして、 マインド・ダイナミックスについて早口で派手派手しく説明する。 そして、受講生には、自分がマインド・ダイナミックスを受講して どんなによかったかということをしゃべらせた。 エアハードは、トレーナーになる前に、車や本のセールスの仕事をしていて、 それらのセールスマンに対するインストラクターも勤めており、 多数の熱烈な部下がいた。 このエアハードの部下たちが、自分の株を上げるために、 ゲストセミナーの後で、連れてこられた人を個別に寝室などに連れて行き、 非常にしつこくマインド・ダイナミックスへ参加するように誘った。 なお、このような勧誘の方法は、本のセールスをしていたときの強引な販売方法を、 そのまま取りいれたものだった。 また、これ以外にも、エアハードの部下たちは、 これまでのセールスで培った方法を使って人集めに奔走した。 こうして、エアハードは、ホテルのレセプション・ルームを借り切って、 たくさん受講生を集めてマインド・ダイナミックスのセミナーを行なうことが できるようになった。

エアハードは受講生にこう言っている。

「マインド・ダイナミックスで得た成果を、 人に話していくという立場を取った卒業生は、 このセミナーで知った原理を、人生に活かしていく能力を、 どこまでも高めていくことができるんだ。」

「マインド・ダイナミックスの成功に関わっていくことで、 君たちはこのセミナーの結果を出しつづけることができるんだ。」

なお、これが、現在、自己啓発セミナーの大きな問題の一つになっている エンロール(enroll: 参加登録) の起源である。

こうして、エアハードはマインド・ダイナミックスで、 一番人を集めたトレーナーになり、 この成功をもとに自分の部下や卒業生を引き連れて独立し、 est を設立した。

また、エアハードは、自己啓発セミナーの方法論で飢餓に取り組もうという、 NGO 組織のハンガー・プロジェクト(Hunger Project)を 1977 年に設立した。 ハンガー・プロジェクトは、 人々に「飢餓を 2000 年までに撲滅する」というコミット(commit: セミナー用語で「誓うこと」) をしてもらうことを目的としたイベントを中心に活動してきた (ちなみに当初は期限を 1997 年としていた。 なお、現在、既に 2000 年になってしまったが、 この期限の話はどこかにいってしまったようだ)。 ハンガー・プロジェクトと、 その若者向け組織であるユース・エンディング・ハンガー(Youth Ending Hunger)は、 日本でも盛んに活動している (なお、日本ハンガー・プロジェクトは、 2000 年に新団体のハンガー・フリー・ワールドになった)。 また、日本の自己啓発セミナーにも、 飢餓救済などのボランティア活動や社会貢献などを目標の一つに掲げているところがあり、 様々な影響を与えている。

日本語の参考文献

  • C+F コミュニケーションズ編、別冊宝島 16 『精神世界マップ』、 宝島社、 1980 年。 -- est の扇情的紹介。
  • レイチェル・ストーム著、『ニューエイジの歴史と現在 -- 地上の楽園を求めて』、 高橋巖、小杉英了訳、角川書店、 1993 年。 -- ワーナー・エアハード、 est、ハンガー・プロジェクト、 ユース・エンディング・ハンガー、ライフスプリングなどに関する記述。
  • ジェリー・ルービン著、『マイ・レボリューション』、 田中彰訳、めるくまーる、 1993 年。 -- est の体験記。 est で自分が源泉であるという話がどう語られているかなど。
  • W・T・アンダーソン著、『エスリンとアメリカの覚醒 -- 人間の可能性への挑戦』、 伊東博訳、誠信書房、 1998年。 -- est の創成期の記述。
  • 福本博文著、『心をあやつる男たち』、文春文庫 文藝春秋社、 1999 年。 -- 日本のセミナーの起源を紹介。 マインド・ダイナミックスやリーダーシップ・ダイナミックス・インスティチュート、 est などの話も出てくる。
  • マーガレット・シンガー著、『カルト』、中村保男訳、飛鳥新社、 1995 年。 -- 大規模自己啓発セミナー(LGAT)のカルト的側面について。 人名が章によって異なったり、 情報がぽろぽろ落ちているような訳であることを警告しておく。 大幅に割愛された文庫版は 1998 年に小学館文庫から 『ひとごとではないカルト』として。
  • 久保博司著、『人は変われる。 -- 内側から見た自己開発セミナー』、 プレジデント社、 1993 年。 -- ライフダイナミックスのセミナーを受講した人がまとめた本で、 セミナーに好意的に書かれて、卒業生の談話も多数収録されている。 また、アレクサンダー・エヴェレットが、 1991 年に来日して行なったセミナーについても書かれている。 ちなみに青山圭秀著、『理性のゆらぎ』、三五館の発行は 1993 年 5 月。 ライフスペースの高橋弘二がサイババに会いに行ったのは 1993 年 2 月である。
  • スティーヴン・ハッサン著、『マインド・コントロールの恐怖』、 浅見定雄訳、恒友出版、1993 年。 -- est とハンガー・プロジェクトについて。
  • ジョージ・レオナード著、『サイレント・パルス -- 宇宙の根源リズムへの旅』、 スワミ・プレム・プラブッダ他訳、工作舎、 1980年。 -- ハンガー・プロジェクトの好意的紹介。
  • 栗原弘美著、『I WANT TO LIVE 飢餓なき世界へ -- 夢の実現に生きる等身大のボランティアたち』、 現代書林、 2000 年。 -- 日本ハンガー・プロジェクトの代表者の出した本。 なお、著者はビジョンダイナミックス研究所というセミナー会社の副代表。
Copyright 1999
Robert Todd Carroll
Last Updated 10/14/00(original)
日本語化 03/12/00(最終改訂 11/06/00)
翻訳: 小久保温

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